■38歳FWに刺激を受ける36歳FWから掛けられた言葉
この試合、FWバフェティンビ・ゴミスはメンバー外になったものの、センターフォワードに入ったのはベテランFW小林悠だった。サンフレッチェ広島戦で負傷して以来、9試合ぶりの出場をスターティングメンバーで飾り、山田新は5試合連続でベンチスタート。山田は悔しい思いを胸に秘めていた。
アビスパ福岡戦では強引なゴールを見せるなど、その成長曲線は著しい。福岡戦後のミックスゾーンで、ゴールを決めた要因はフィジカルの強化にあるのか、あるいは技術の向上にあるのかと聞けば、技術面での成長があると話しており、その強靭なフィジカルを勝利に結びつける術を得始めている。
ただし、小林悠もいつもとは違った姿を見せていた。前線でボールを受け、周囲の選手の押し上げる時間を作るなどしていた。その意識について聞けば、「自分に入ったときには、絶対に失わないようにしようと起点にしっかりなりました。バフェが最近起点になっていたので、そういうところも見習いながら」と、いまだに進化を止めないことを明かす。
そして、「それプラス背後への動きができれば自分の良さも出せる」と自分の特徴も見失わず、むしろ、新しいスタイルの中で出そうとしていたのだ。
38歳のFWに刺激を受けて新境地を開こうとする36歳のFWから、「絶対に決めてこい!」と声を掛けられてピッチに入った山田が、発奮しないわけがなかった。先述したように、短い時間の中でも得点を奪うことに集中して、見事に応えた。66分間プレーした小林はシュート数でゼロに終わったものの、24分を戦った山田のシュート数は2。そのうち、一つがチームを敗戦から救ったのだ。
この試合に出場したストライカー2人、いや、バフェティンビ・ゴミスも含めた3人の“繋がり”がゴールにつながった。
(取材・文/中地拓也)
(中編へ続く)