後藤健生の「蹴球放浪記」第216回「ソウルの空に中国国旗がひるがえった夜」の巻(1)4年半ぶりの「首脳会談」と冷戦下の「交流」、国交のない中国への「渡り方」の画像
1982年の「第10回韓・日蹴球定期戦」の入場券。提供/後藤健生

 蹴球放浪家・後藤健生は、さまざまな国を歩いてきた。また、多くの歴史の転換点も目にしてきた。サッカーもまた、時代の変化を象徴することがあるのだ。

■4年半ぶりの「日中韓首脳会談」

 5月の末に韓国・ソウルで日中韓首脳会談が開かれました。

 日本からは岸田文雄首相、韓国からは尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が出席しましたが、中国から出席したのは習近平国家主席ではなく、李強首相でした。

 岸田首相は自民党の政治資金問題などで支持率が低下。自民党内からも批判が高まるなど、まことに頼りない状態ですが、日本国は議院内閣制なので最高指導者は内閣総理大臣(=首相)です。尹錫悦大統領も先日の国会議員選挙で敗れて少数与党となり、政権は弱体化していますが、大統領制の大韓民国では直接選挙で選ばれた大統領が国家元首であり、最高指導者でもあります。

 一方、中国では共産党が国を支配しています(憲法にそう規定されているのです)。ですから、最高指導者は共産党の総書記であり、国家主席でもある習近平氏です。首相(=国務院総理)というのは、共産党が決めた政策を実行するための役職であり、李強氏は最高指導者ではありません。

 それはともかく、3か国の首脳会談は4年半ぶりの開催でした。コロナ禍という理由もありましたが、日中、韓中の対立で首脳会談が開けなかったのです。

 この3国、時代によっては韓国と中国が友好的で、一緒になって日本批判を強めたこともありましたが、現在の尹錫悦大統領は親米、親日路線なので、5月の首脳会談では「日韓が組んで勢力拡大を図る中国と対峙する」という構図でした。

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