■結果を残すために「慎重に、焦れずに、辛抱強く」
しかし、サッカーに詳しくない人にとっては、90分までの試合展開は退屈なものだったのではないだろうか?
この大会は「オリンピック予選」ということもあって、日本代表の全試合が地上波で生中継されていた。従って、ウズベキスタンとの決勝戦はあまりサッカーに詳しくない人たちも見ていたことだろう。だが、“退屈な”90分の間に見切りをつけて寝てしまった人も多かったのではないだろうか。
本来なら、もっと攻撃的なエンターテインメント性の高い試合ができればいいのだが、今大会の日本代表は結果を残すために、慎重に、焦れずに、辛抱強くプレーし続けた。そんな印象の大会だった。
「オリンピック出場権獲得」、「優勝」という目的を達成するためには、自分たちのやりたいサッカーを捨ててでも冷静に戦い続けたのだ。非常にプロフェッショナルな戦い方だったと言えよう。
時にはターンオーバーを使って選手の負担を分散し、試合中にも相手にリズムを握られた場面では割り切って守りに徹し、相手の疲れを待って選手交代のカードを切りながら戦ったのが日本代表だった。すべて、「勝利の確率を少しでも上げるため」の計算に基づいた戦い方だった。
たとえば、初戦の中国戦。8分に松木玖生が先制ゴールを決めて楽勝ムードかと思っていたら、17分という早い時間帯に西尾が退場となって、日本は数的劣勢に陥ってしまう。だが、非常に難しい状況に追い込まれながらも、その後のアディショナルタイムを含めれば80分以上を冷静に戦ったのだ。
攻めたい気持ちは封印して、割り切ってチーム全員が守備のために貢献を続けた。
退場で人数が少なくなってしまうと、どうしても弱気になったり、慌てたりするものだ。しかも、それが早い時間帯ともなればなおさらだ。しかし、日本の選手たちはこれから残り時間をどのように戦っていくのかをしっかりと全員が共有しながら、冷静に戦っていた。