■62分投入の松木玖生が「必殺のスルーパス」

 こうして、日韓戦は両チームとも慎重な、そして、おとなしい展開で始まった。

 韓国はスリーバック。いや、両ウィングバックも下がって5人のラインで日本の攻撃を迎え撃つ。日本は、平河悠と内野貴史の左サイドを使って攻撃するものの、人数をかけて守る韓国の守備を崩すことができない。だが、そこで無理をしてボランチやDFが攻撃参加していくこともない。

 韓国はボールを奪ったら日本陣内深くにロングボールを蹴り込んで、トップの長身FWチョン・サンビンにボールを集めてカウンターを狙ってくる。日本にとっては韓国がパスをつないできてくれればやりやすいが、ロングボールで攻撃されるのが一番、嫌なやり方だ。

 日本はボールを握る時間も長く、また、平河が切れ込んでからシュートを放ったり、右サイドで半田や藤尾翔太がパスを交換してペナルティーエリア内深くまで進入することはできたが、シュートは枠を捉えられず、前半はスコアレスのまま終了した。

 しかし、後半に入ると、キックオフから日本が右サイドでつないで、いきなりビッグチャンスが訪れた。そして、その後、次第に当たりが激しくなり、両チームとも、より攻撃的に変化。互いに前からプレスをかけはじめて、ようやく日韓戦らしい雰囲気になってくる。

 57分に韓国がチョン・サンビンのドリブルからホン・ユンサンが抜け出してチャンスを作ると、62分には日本ベンチも藤田譲瑠チマ松木玖生、佐藤恵允といった“主力組”を投入する。彼らの出場時間を「30分程度」に制限したのも、準々決勝以降を見据えてのことだ。

 こうして日本が次第に攻撃力を上げていくが、韓国も右サイドのホン・シフが巧みにボールを持ち込んでチャンスを作り、日本ゴールを脅かす。

 69分には、中盤で相手2人に囲まれた松木が持ちこたえただけでなく、相手を振り切ってすぐに内野航太郎への必殺のスルーパスを通して、その能力の高さを見せつけた。

 しかし、75分。韓国が右サイドからのCKから、ファーサイドのキム・ミヌが日本DFのマークを外してヘディング・シュートを決め、その後の日本の猛攻をしのぎ切って勝利をつかみ取った。

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