■「攻撃的にプレーしたいんですけれど」

 結果的に柏は白井、川口、島村、白井とテンポよくボールを繋いで、そこからマテウス・サヴィオが右外を破ってマイナスクロスに持ち込む。そこから右足で上げた低いクロスに途中出場のFW木下が右足ボレーで合わせる形だったが、ファーから鋭く入り込む木下に対して、右サイドバックの石原広教がインの佐藤瑶大に受け渡すような形になり、佐藤も咄嗟の状況で木下に厳しく付けず、手前でシュートを許してしまった。

 浦和の左サイドの守備に関しては左ウイングの松尾が下がって自分の守備に参加するべきだったか、マリウスがサイドにスライドすることで、マテウス・サヴィオを封じに行くべきだったかなど、議論の余地がある。柏は同サイドに人数をかけたが、右サイドバックの川口は起点のパスを出した後に、後ろでステイしていたからだ。

「自分たちが行けるタイミングで前に行くというのが1つあったので。得点シーンもそうですけど、いいタイミングで前から嵌められた時は逆に、自分たちがいい距離感で攻撃できるので。そういうところがうまく行った」

 そう語る川口だが、もし松尾が下がって守備に参加していたら、後ろにステイする必要性がなくなるので、同時に攻め上がっていたかもしれない。それでも自陣が数的不利になる状況であれば、ウイングの選手でもダッシュで戻り止め切りに行くという選択もある。ヘグモ監督は松尾に疲れが出ていたことを認めつつも「もちろん我々は攻撃的にプレーしたいんですけれど、守備のところでのバランスというのは必要だと思います」と振り返っている。

 松尾だけではないが、攻撃的なスタイルを掲げていようと、本当に厳しい局面ではアタッカーの選手でも後ろの守備を助けるという意識は現在の浦和にやや欠けているようにも見える。

(取材・文/河治良幸)

(後編へ続く)

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