■チームメイトに言い続けたこと
その小林が後半20分にゴールを決める。ゴール前での混戦から流し込んだもので、多くの川崎サポーターが見守る前で同点弾を決めて見せた。この試合の舞台はエディオンピースウイング広島。今年から使用されている新しいスタジアムで、観客席からはピッチ上がよく見える。この歴史的瞬間を川崎サポーターが目に焼き付けるため、“サッカーの神様”がここまで伸ばしたのではないかと思わせるようなタイミングだった。
そしてこのゴールにチームメイトもサポーターも燃えた。小林は直後に負傷退場してしまうものの、代わりに入った山田新がファーストタッチで一時、逆転となったゴールを決めてみせる。劣勢という雰囲気を吹き飛ばすほどの勢いが、小林のゴールにはあった。
「前半リードされた中で後半に入って、なんとか自分のゴールで気持ちを上げていけるようにという思いだった。オニさん(鬼木監督)もチームとして上に行くための大事な試合だと話していたし、個人的にも燃えていた」
小林が試合後にミックスゾーンで話したその言葉は、自身の役割と影響力がどういうものかを理解しているからこそのものだ。
だからこそ、この試合でチームメイトにかけ続けた言葉があった。それは、「勝てるぞ!」というもの。小林は、「“勝てるぞ”って、背中を叩いて、ケツを叩いて、勝って帰るぞって言っていた」と振り返る。その気持ちの強さが周囲に与えた影響は言うまでもない。そして、苦しむ川崎フロンターレというチームに取り戻させたものの大きさも。