■2つある理由
そうしてすぐにベンチに走った田邉の姿は、ピッチの外に出た佐々木の視界に入っていた。しかし佐々木は、冒頭にあるように「絶対にやります。絶対に戻ります」と伝えたという。その気持ちを、
「交代は絶対にしないと決めていたんで。どんなに痛くてもピッチに立つっていうのは今年に入ってずっとそこは思い続けてやっている」と明かす。
その理由は2つある。一つは、昨年味わった悔しさがあるからだ。「去年、長い時間ピッチに立てませんでしたので、どんな状況でもやっぱり一年立ち続けたい」
そしてもう一つは、現在の最終ラインで負傷者が続出しているからだ。
「チームは苦しい状況で、ケガをしてしまうっていうのはやっぱり申し訳ない」
とはいえ、先述したようにピッチの上では苦悶の表情だった。「かなり痛くてしびれた」と本人も話すが、その痛みの“正体”は分かっていた。詳細は書かないが、少し経てば元に戻ることを佐々木自身も鬼木監督も知っていたからこそ、勝利を目指して交代枠を温存できたのである。そしてそれは、佐々木の闘志の強さでもあった。
(取材・文/中地拓也)
(後編へ続く)