■「うるっと来るような瞬間なんです」

 横浜F・マリノス戦後のこの光景は多くの川崎サポーターの心に残ったはずだ。そして、美しいものにも見えた。サポーターを見た指揮官がそれに行動を起こし、そこにサポーターが被せるように応える。このような相思相愛の関係は、そうあるわけではない。

 翌日、麻生グラウンドで鬼木監督自身にその思いを聞くと、一気に表情を崩した。サポーターからのエールが心強かったことはすぐに分かった。そして、出てきた言葉もそのリズムも、こちらまで嬉しくなるようなものだった。以下は、その答えの冒頭の部分である。

「自分の名前も呼ばれて、それが胸に熱く響きましたし、チームが苦しいときとか、昨日のように1人減って本当に難しい展開になった中で、ああやって鼓舞してもらえるっていうのは、うるっと来るような瞬間なんですよね。

 選手がそれに応えて、ホイッスルが鳴り終わった瞬間にみんなバーって倒れちゃうようなそれぐらいのものを出している中で、やっぱりああいう労いの声や声援っていうのは、また次のゲームに向けてパワーをもらえるので、そこは非常にありがたかったですし、なかなか勝てなかったりとかそういうときでも、常にチームを応援してくれたり、自分自身のコールをしていただいたりとか、それに“応えよう!”と思うのは当たり前だし、むしろ(横浜FMとの)試合が始まるときは“逆に何とか喜ばせたい”と思って戦っていたので」

  1. 1
  2. 2
  3. 3