■「国土の30%が海面下」オランダ特有の器具
さて、この記事の関連写真、<写真1>をよく見てほしい。向こうのサッカーピッチや手前の水たまりではない。左手に立つ木の根本右1メートルほどのところに小さな「輪」があるのがわかるだろうか。さらによく見ると、その右に長い鉄の棒がつながっている。「輪」も鉄製のものなのである。
この写真は、15年ほど前にオランダで撮影した。私は初めて「実物」を見たのだが、実はこの器具、オランダのサッカー界では非常にポピュラーで、しかも非常に大事なものなのである。使い方は、いたってシンプル。この器具を使い、水に落ちたボールを拾い上げるのである。
「世界は神が創りたもうたが、オランダはオランダ人が造った」という言葉がある。4万1846平方キロ(北海道の約半分)の国土をもつオランダ。その約20%に当たる8100平方キロ(静岡県よりわずかに広い)は、13世紀以後の干拓事業によってオランダ人が自分たちの力で造成したものなのである。湿地や浅い海に堤防を築き、その中を埋めてつくった。その結果、現在のオランダは、国土の30%は海面下にある。
土地を守るため、四六時中、排水を続けなければならない。そのための動力として活躍してきたのが、オランダのシンボルとも言える「風車」なのである。同時に、干拓地には、排水のために縦横に運河や水路がはりめぐらされた。そして、「草の根」で使われるオランダのサッカーグラウンドの多くが、こうした運河や水路に面したり、囲まれたりしているのである。