■「フロンターレらしさ」とは
鬼木監督は自身に矢印を向ける監督である。だからこそ、ここ数年でいくつものタイトルを獲得してきたし、川崎フロンターレというクラブが多くの人に同じような印象を与える要因となっている。昨年から所属している大南拓磨は横浜F・マリノスの松原健との対談した際に、「フロンターレらしさという言葉を皆さんご存じだと思いますが」と話しているのもその一つの例だろう。
一方で、その指揮官自身が今、「フロンターレらしさ」をどう捉えているのか。それについて(筆者の質問はやや長いが、要約すれば“フロンターレらしさや改めて目指すものとは何か”)について聞くと、指揮官から熱い言葉が出てきた。
「もちろん失点が非常に多いので、そこはもう全員でやるべきことをしっかりとやらなきゃいけないという話はしています。ただそれと同時に、攻撃のところでよりアグレッシブさだとか、相手の嫌がるプレーを常にし続けるところを、とにかく強調しながらやってきています。
現代サッカーでは形や体の強さ、アスリート能力とか、そういうものが求められていますけれども、そこだけではないサッカーのもう一つの魅力だったりとか、選手個人、個人のプレー・顔が見えるサッカーをしなきゃいけないし、もう一つは、フロンターレというチームのベースのところ、立ち返る場所をもう1回しっかりとみんなで意識しながらやっていきたい」
さらに、「もしかしたらトレンドとは少し、逆行とは言いませんけども、違うかもしれないけれども、それを打ち勝っていく、それぐらいの気持ちでやっていこうとそういう話はしています」とも続ける。選手の特徴がよりピッチで生きるように、そしてそれが観る人の楽しさにつながるように、もちろん、プレーする選手が楽しさを感じられるように――その思いは強い。
目指すものがある、とは鬼木監督がたびたび口にする言葉だが、それをチーム内で改めて言語化したという――。
(取材・文/中地拓也)
(中編に続く)