■サッカースタジアムとしての「明らかな欠陥」
2018年末には完成し、2019年のラグビー・ワールドカップのメインスタジアムになる予定だった国立競技場。しかし、デザインや建設費などをめぐるトラブルで着工が大幅に遅れ、竣工は2019年11月30日。ラグビー・ワールドカップの決勝戦は、横浜国際総合競技場(日産スタジアム)で開催された。
完成して最初に行われた競技が、2020年元日、サッカーの天皇杯決勝戦だった。新進気鋭のヴィッセル神戸が鹿島アントラーズを2-0で下して初タイトルを獲得した。入場者は5万7597人。「コロナ直前」の試合である。だがその日、私はこのスタジアムには決定的な欠陥があること気づいた。
陸上競技型のスタジアムであるから、いわゆる「マラソンゲート」があるのはわかる。日本の陸上競技場では、場内整備の機器を搬入するためもあって、通常は4つのコーナーのところに大きなゲートが設けられている。ところが国立競技場ではもうひとつ、南側の「ゴール裏スタンド」の1階中央が大きくえぐられ、巨大なゲートが設置されているのである。
2020年元日の天皇杯決勝のカードは「神戸×鹿島」。「アウェー扱い」の鹿島のサポータースタンドは、この巨大なゲートで二分される形になった。一体感が重要な要素であるサポーターにとっては、大きな障害だ。このゲートにどんな意味があるのか知らない。だが、サッカーで使うスタジアムとしてはありえないことであり、明らかな欠陥だった。