■タイムキーパーが「時計を管理する」ラグビー
たとえばラグビーでは、最近は国際試合やリーグワン、大学選手権といったハイレベルの試合では、タイムキーパー制が導入されている。
ラグビーは試合時間が80分(40分ハーフ)で、かつては現在のサッカー同様、時間は主審が管理しており、選手交代は負傷者の治療、給水などの場合に時計を止めてアディショナルタイム(ラグビーでは「ロスタイム」、「インジュリータイム」という言葉が使われる)を取っていた。
だが、今ではタイムキーパーが時計を管理し、彼が時計を止めたときには場内の大時計も止まるし、中継映像の時計も止まるから、時計の針が「40分」を示した瞬間が試合終了となって、ホーンの音が場内に鳴り響く。ラグビーの方々が好んで使う言葉を使えば「ノーサイド」だ。
ただし、ラグビーでは40分を越えても、プレーが継続している場合は試合は終了しない。ボールがラインを超えるなどプレーが止まった瞬間まで、プレーが続くのだ(守備側の反則では試合は終わらない)。
だから、リードされているチームがボールを持っている場合には試合は続くから、40分を5分以上経過してから逆転トライが決まることだって、理論的にはありうるのだ。
2015年のラグビー・ワールドカップ初戦で日本代表が南アフリカに勝利した「ブライトンの奇跡」(この試合は、現在、三笘薫が活躍しているブライトン&ホーヴ・アルビオンの本拠地ファルマー・スタジアム=アメックス・スタジアム=で行われた)で、日本の逆転トライが決まったのは83分55秒のことだった。
ただ、いずれにしてもスタジアムの大時計が「80分」を指す瞬間が試合終了の時間であり、その後、どのタイミングで試合が終了するかは明確にルール化されているので、ベリンガム事件のようなことは起こらない。
フットサルでは、プレーイング・タイム制で行われている。
選手交代や負傷だけでなく、ボールがラインを割ったり、反則があった場合もすべて時計が止まる。そして、時計はタイムキーパーが管理しており、場内の時計も、中継映像の時計も止まる。フットサルでは、場内の時計は「20:00」からスタートして、残り時間が表示されるから時計の表示が「ゼロ」になった瞬間が試合終了である。ラグビーと違って、攻撃が継続していても、その瞬間に試合は終わる。
こちらも、試合終了の瞬間が審判員だけでなく、全選手、観客、視聴者に分かっているからトラブルにはなることはない(タイムキーパーがすぐに時計を止めなかったので、時計を戻すことはあるが)。