■森山采配ズバリ! 途中出場の郷家が違いを生み出す
仙台の攻撃の狙いは、後半も変わらない。ボールを持ったらまずエロンを見て、相手のハイプレスを回避する。
攻撃に変化が見えたのは、62分の選手交代からだ。オナイウに代わってMF郷家友太が、エロンに代わってFW菅原龍之助が送り出される。
スピードを生かした縦への突破を得意とするオナイウは、右サイドで張り出してウイングのようにプレーする。それに対して郷家は、パスの出し手にも受け手にもなれる。投入から5分後にはペナルティエリア内から、GKを襲う左足シュートを浴びせた。
76分にはCB小出悠太がパスカットし、センターサークル付近の郷家がパスを受ける。その刹那、左サイドMFの相良竜之介が走り出す。相良は「友太くんと目が合って、これ来るなと思った」と言い、郷家は「目は合ってないんですけど、合ったことにしときましょうと相良に言われました」と笑うが、ふたりのイメージが合致したのは間違いない。
相良の動き出しに合わせて郷家が左サイドへ浮き球のパスを通すと、胸コントロールからシュートへ持ち込んだ相良の右足ループが、GKの頭上を破ってネットへ吸い込まれる。背番号14の芸術弾で、仙台が先手を取った。
1対0のままで終盤を迎えると、森山監督はDFマテウス・モラエス、DF知念哲矢を投入する。システムも4-4-2から5-4-1へ変更した。水戸がサイズのある選手を前線に並べてきたことへの対応であり、ルヴァンカップを含めて終盤に失点していることへの対策でもあった。指揮官の狙いを選手たちはしっかりと実践し、仙台は勝利を告げるホイッスルを聞いたのだった。
試合後の森山監督は「宮城、仙台で必要とされ、応援してもらえるクラブになるのが、今年の一番の目標。サポーターのみなさんに喜んで帰ってもらえるために、全員が死力を尽くしたかなと」と話した。これで2勝1分の3戦負けなしとしたが、「2点目を決めるチームが上位にくるので、2点目をしっかり入れられるチームに今後しっかりなっていかないといけない」と課題をあげることも忘れない。
自分たちでボールを動かしながら崩していくことも、もちろん視野に入っている。ただ、勝つためにやるべきことを遂行し、攻守の切り替えや球際の攻防にこだわる。
「自分がマッチアップした相手に負けないことを意識してやりました」と郷家は言う。局面で違いを生み出せる彼のような選手が、ハードワークを強く心がけているのだ。今シーズンの仙台は、16位に沈んだ昨シーズンとは明らかに違う。