後藤健生の「蹴球放浪記」第202回 韓国代表ワールドカップ予選翌日、「三・一節」のソウルを歩く(2) 隣国でも広がる「独立門」への誤解の画像
西大門刑務所歴史館の入場券 提供/後藤健生

 蹴球放浪家・後藤健生は、サッカー日本代表がまだ遠く力及ばない頃から、韓国代表の試合を取材してきた。当然、隣国まで何度も足を伸ばしている。今から12年前のワールドカップ予選では、微妙な時期にあるソウルへと乗り込んだ。

■タプゴル公園では日本語を「自粛」

 独立運動は「三・一独立運動」とか「万歳事件」などと呼ばれますが、日本が戦争に敗れて韓国(朝鮮)が独立することになった直後の1946年に3月1日は祝日に指定され、今でも毎年記念行事が行われています。

 中でも、ソウルの中心街、鍾路(チョンノ)に面したタプゴル公園では大規模な集会が開かれます。なぜなら、ここが事件の発端となった、かつてのパゴダ公園だからです。

「タプ」は漢字で書くと「塔」。大理石の石塔があるため、この公園は「パゴダ」とか「タプゴル」と呼ばれているのです。遠い昔、円覚寺という仏教寺院があった場所で、石塔もその名残です。19世紀に朝鮮(韓国)が開国してからは漢城で最初の公園となりました。

 クウェート戦があった夜、在日韓国人の友人に「明日、タプゴル公園に行ってみようかと思う」と言ったら、「止めておきなよ」と言われましたが、好奇心を抑えきれず、僕は朝からタプゴル公園に向かいました。

 ふだんは老人たちが散策している都心の静かな公園ですが、この日は大勢の人が集まっており、演説が行われていました。反日ビラも手渡されました。そして、僕は公園内で韓国の人たちと一緒に独立運動の犠牲者に黙祷を捧げ、「愛国歌」(韓国国歌)を歌いました。

 まあ、日本人であることがバレたからといって危害を加えられることはないでしょうが、トラブルは避けたいので、一緒に行った友人と公園近辺では日本語は話さないことにしておきました。

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