■FAカップ決勝に出場した「唯一のなでしこ」
女子のFAカップ決勝も2015年からウェンブリーで行われているが、その決勝戦に出場した日本選手は2021年の岩淵真奈(アーセナル)ただひとり。後半16分からの交代出場だった。だが、チェルシーに0-2で敗れ、カップ獲得はならなかった。
もうひとり、というよりもう3人、「ウェンブリー」で忘れてならない名前がある。家本政明主審と大塚晴弘副審、そして名木利幸副審である。この3人は2010年5月24日、南アフリカでのワールドカップの準備試合として行われたイングランドとメキシコの国際親善試合を担当し、高い評価を受けた。試合は3-1でイングランドの勝利だった。
私がこのウェンブリー・スタジアムで試合を見たのは、3回。1995年のアンブロカップ(2試合)、1996年の欧州選手権(4試合)、そして2012年のロンドン・オリンピック(4試合)である。幸いなことに、アンブロカップと欧州選手権では「初代」の、そしてオリンピックでは「2代目」のウェンブリー・スタジアムで試合を見ることができた。
「初代」は屋根の支柱があり、椅子は木製でいかにも「時代もの」といった雰囲気だった。「初代」のシンボルである北側スタンドの「ツインタワー」もきれいに残っていた。選手の入場は東側のゴール裏スタンドに開けられたゲートから行われ、レフェリーと両チームのキャプテンを先頭とした両チームがこのゲートからゴールの脇を通ってピッチの中央まで歩いてくる姿には、いつも心を打たれた。
それに比較すると、「2代目」は現在世界の各地にある巨大スタジアムと変わるところはなく、やや興ざめだったが、中にはいると、その巨大さに圧倒された。9万人近くの観客が1プレー1プレーに沸く雰囲気は、さすがに「本場」のものだった。
「サッカーファン」としての私の長年の夢のひとつは、「ウェンブリーでFAカップ決勝を見ること」である。残念ながら、まだかなえられていない。