■「リスクはありますけど、それも含めて成長」
そうした中村の言葉をルーキーの植村に伝えると「いやなんかもう、自分なんかはプレッシャー来てるから、蹴ればいいんじゃないかみたいに思ってたんですけど」と苦笑しながら、正直な気持ちを打ち明けてくれた。
「本当にチームのやりたい、目指してるサッカーというのが、ビルドアップでしっかり繋いで、自分たちの色を出してやっていくっていうのが1つあるので。リスクはありますけど、それも含めて成長だと思う。そこはトライし続けることが大事ですけど……自分は怖えな〜て(笑)」
実際に、川崎のインターセプトから危険なFKに繋がったシーンには植村も絡んでいた。それでも中村や上原、そして守護神の川島永嗣にも背中を押される形で向き合ったことで、植村も含めて全員がボールを繋ぎながら、ゴールに向かう矢印になったのだろう。試合は前半のうちに川崎が1点を返し、さらに後半に追いつくという試合展開で、磐田はかなり苦しい状況になった。
それでも横内監督はサイドアタッカーの古川陽介やFWマテウス・ペイショットといった攻撃的な選手を投入して、前向きに戦う姿勢をピッチの選手にも投げかけた。そこから植村のスルーパスにジャーメインが抜けて、GKチョン・ソンリョンに倒される形でPKを獲得して、ジャーメインのこの日3点目で勝ち越し。一度は川崎がわのPKで同点にされるが、後半アディショナルタイムに再度のジャーメインによるPKで、磐田の決勝点が生まれた。
「我々が目指すところというか、点を取るために準備してきましたので。そういう意味では選手が最後まで下を向くことなく、本当にトライし続けてくれた」
そう横内監督が振り返るに相応しい姿勢を見せての勝利。ここから長いシーズン、磐田にとって良い時もあれば悪い時もあるはずだが、川崎との激闘の中で見せたトライする姿勢というのはチームを支えていくはずだ。
(取材・文/河治良幸)