■北朝鮮「コンディション最悪」も…日本対策を徹底
日本側の思惑というのは、最終予選でオーストラリアとの対戦を避けるためだった。
オーストラリアと対戦した場合、初戦がアウェー、第2戦がホームとなることが決まっていた。
そうなると、南半球にあって真夏のオーストラリアで戦うために暑熱対策を行う必要があり、さらに第1戦終了後に日本に移動してから寒さの中で第2戦を行わなくてはならない。そうした移動を避け、気候馴化が必要ない北朝鮮との対戦を選択し、日本は「無気力試合」を行ったのだ。
そうしたプランが第1戦の開催地を巡るドタバタ劇のせいで台なしになり、暑熱対策なしに暑さの中で戦うはめに陥ってしまったのだ。長距離移動の疲れと暑さ……。そんな状態ではふだんのようなパフォーマンスが発揮できなくても当然だ。
もちろん、対戦相手の北朝鮮にとっても状況は同じだ。
日本よりもさらに寒さの厳しい北朝鮮から陸路中国に移動して、北京経由で現地入り。ジッダに到着したのは、日本より1日遅い2月22日。彼女たちにとっては、日本チームよりもさらに対策が難しくなったはずだ。
しかも、本来はホームで戦えるはずの試合が「中立地」になったのだから、チームとしては憤懣やるかたないところだろう。
もちろん、このような事態を招いた原因は北朝鮮政府の孤立政策にあるのだし、サッカー協会が日本側の事前準備に協力的であれば、ホームゲーム開催も可能だっただろう。
だが、それは政府あるいは協会の問題であって、選手やチームスタッフの責任ではない。最も大きな迷惑を被ったのが、北朝鮮代表チームだったことは間違いない。
だが、コンディション的には北朝鮮代表も最悪の状態だったろうが、彼女たちは日本戦に向けて長期合宿を行っていた。日本の試合の映像や情報はいくらでも手に入る。そうした情報に基づいて「日本対策」を徹底していたことは、第1戦の戦いぶりを見れば明らかだった。