パリオリンピック出場権を巡る女子サッカーのアジア最終予選で、2月28日、再び北朝鮮と激突する日本女子代表。中立地サウジアラビアで行われた第一戦は0-0のスコアレスドローに終わり、国立競技場で行われる第2戦で勝利したチームがパリ行きを決める。そもそも、この最終決戦にたどり着くまでには、さまざまな紆余曲折があった。なでしこジャパンが挑む「負けられない戦い」の舞台裏と浮上した大問題に、サッカージャーナリスト後藤健生が警鐘を鳴らす。
■ウズベキスタン戦「シュートを打たなかった」思惑
さらに難しかったのが気候馴化(異なる気候に徐々に体が慣れていくこと)だ。
開催地に決まったジッダは、毎日の最高気温が30度を超えていた。冬の日本やヨーロッパから移動して試合を行うには難しい条件だ。
時間をかけて暑熱対策を進められれば問題ないのだろうが、開催地の決定が直前までズレ込んだことで、それも不可能となった。
なにしろ、もし中国北部の大連での開催となった場合には(あるいは平壌開催となった場合には)、最高気温が3度、4度ほどという寒さの中での戦わなければならなかったのだ。
結局、日本代表は試合3日前の2月21日に開催地のジッダに到着したが、もちろん、中2日では十分な暑熱対策などできるはずはなかった。
昨年10月にウズベキスタンで行われた2次予選で、日本代表はウズベキスタンに2対0で勝利したが、2点を先行した後はまったくシュートを打たずに試合を終え、「無気力試合」という批判を受けた。
3組に分かれた2次予選では、各組首位通過の3チームに加えて、2位のうち成績が最も良いチームが最終予選に進出することとなっていた。そこで池田太監督は、ウズベキスタンが勝ち抜けるように、大量得点をしないことを選択したのだ。そして、日本側の思惑通り、ウズベキスタンが最終予選に進出し、日本は北朝鮮と対戦することが決まった。