■「なりふり構わず戦っていくモード」
問題はその理由に、これだけ苦しい戦いの中で、やはり目線を世界に向けてしまっていたことだろう。このアジアの戦いにおいて、特定の対策に頼るようでは世界で戦っていけないという目線が、危機的な状況を乗り切るプランの実行に向かわせなかった。正直に言うと筆者も、今回の日本代表がチーム力を発揮できれば、相手の対策を乗り越えてアジアの頂点に立てる期待は持ってしまっていた。
選手たちのピーキングが、完璧に整っていたら、あるいはそうした理想的な流れもあったかもしれない。しかし、実際はグループリーグから苦しい戦いを強いられた中で、一旦は世界を頭から外して、このアジアカップを勝ち抜くために、なりふり構わず戦っていくモードになるべきだったかもしれない。
ただ、何事でもそうだが時間を巻き戻すことはできない以上、ここから最終予選など、どうアジアに向き合っていくか。そこで勝つために必要な一つ一つがけっして世界で戦う基準にはならないかもしれないが、アジアに目を向けずにアジアで勝ち切るほど、日本は圧倒的ではないという現実を受け入れて、成長と結果を並行させていくしか道がないのではないか。
(取材・文/河治良幸)