2−1で破れたアジアカップ準々決勝・イラン戦はGKの鈴木にとって、今大会でベストとも言えるパフォーマンスだった。グループリーグの初戦では失点に直結するミスが批判の的になり、イラク戦は必ずしもGK一人の責任と言い難いシーンに関しても、名指しで厳しい意見が飛ぶなど、風当たりは強くなった。そもそも鈴木の起用に疑問の声も多くあがっていた中で、リアルに向き合って代表戦に向き合う姿勢を研ぎ澄ませていった結果だろう。
筆者は鈴木が所属した浦和レッズなど、Jリーグのキャンプを取材していたこともあり、このイラン戦が現場で観た日本代表、そして鈴木の最初で最後の試合となった。それだけに、これまで映像で観ていたものと見え方が違うのかもしれないが、イランの危険なアタッカーたちに立ち向かう彼は本当に頼もしかった。
シュートのセービングはもちろん、ディフェンスの背後やボックス内のワイドな場所に出てくるボールに素早く反応して、相手選手と接束するギリギリで処理したり、正面に飛んできた強いボールを全身で受け止めた。
ビルドアップでも相手のプレッシャーに恐れることなく、ワイドに開いたセンターバックや左右のサイドバック、ボランチなどに速いボールを付けて、攻撃にリズムを付けた。それでも鈴木の口から出てきたのは厳しい自己評価だった。
「失点の部分の自分がチームへの関わり方というのは直接スコアに影響を与えてしまったかなと思います」