Jリーグが2024年シーズン開幕に向けて動き始めている。進化を続けるJリーグは、今季もレギュレーションにいくつかの変更が加えられた。そうした変化は、リーグの行方にどんな影響を及ぼすのか、サッカージャーナリスト後藤健生が読み解く。
■選手交代の変遷
サッカーは、いやラグビー系も含めてフットボールというスポーツは、もともとは選手交代が一切、認められていなかった。
ワールドカップで言えば、1966年のイングランド大会まではプレー続行不可能な重傷を負っても、選手交代は認められなかった。
イングランド・ワールドカップのグループリーグで、北朝鮮がイタリアを破るという世紀の大番狂わせがあったが、そのとき、イタリアは前半34分にDFのジャコモ・ブルガレッリが膝を負傷してしまい、1人少ないまま戦っていた。準決勝のソ連対西ドイツの試合でも、ソ連のDFヨゼフ・サボが前半に負傷してソ連は1人少ないまま戦って1対2で敗れた。
それを受け、ワールドカップでは1970年のメキシコ大会から選手交代が認められるようになったのだ。当初は「選手が負傷した場合のみ交代を認めるべき」と考えられていたのだが、交代が必要な負傷か否かを判断するのが難しいので、そうした制限は加えられず、1970年大会では西ドイツのヘルムート・シェーン監督が戦術的な交代を駆使して戦った。
その後、交代可能人数は次第に増やされていく。交代可能人数が少ないと負傷や疲労による交代に備えなければならないので、戦術的理由で積極的に交代カードを切ることは難しい。
日本代表史上初の外国人監督となったハンス・オフトなどは、交代カードを1人余らせたまま試合を終わらせるのが常だった。交代枠が3人でも、いざという場合にそなえて2人しか交代させないのだ。