■森保監督の提案と挑戦
森保監督に関しては、これまで日本サッカー協会やスタッフと揉めたという噂も聞いたことがない。一方で監督はアイデアマンでもあり、さまざまな提案を行っているとも聞いている。森保監督からはどんな話が山本ダイレクターに持ちかけられているのか。
「森保監督がコーチたちに相談したり相談されたりして、“こういうことにトライしたいのですが、いいですか?”と聞いてくることもあります。そんなとき、悪くないものはやっていこう、と取り入れるようにしています。やってみて思った結果が出ないことがあるかもしれませんが、何もチャレンジしないよりは、可能性のあるものはトライするようにしています。
たとえば若年世代から上の世代にチャレンジしてもらって、うまくいかなかったら元の年代別代表で再度頑張ってもらうということですね。それは悪いことではない。SAMURAI BLUEでうまくいかなくても自分の年代に戻ったらチームの中心でできるから自信を取り戻せると思います。だから上の年代に上げてみることを怖れず、上げることで刺激をどんどん与えてくことが大切ということです」
ところで日本は確かに強くなってきた。FIFAランクでは17位(2023年11月)とアジアのトップに立つ。一方で、W杯でベスト8以上を目指すのなら、FIFAランクで8位以内に入ることも一つの目安になるのではないだろうか。
「FIFAランクが上がるということは、当然、力がついて結果が出てきているからだと思うので非常に重要な指標だとは思います。けれど、我々は常にその結果よりも成長を意識してやっていくことが大事だと思います。チームがボリュームアップして、選手が成長して、チームが成熟していけば、それでいいと思っています。そしてその結果が当然、FIFAランク8位以内に入っていくと思います」
このまま躍進を続けていけばFIFAランク1桁も現実味を帯びて来る。そう思わせてくれる魅力が、今の日本代表にはある。
そして、アジアカップにおいてチーム作りはさらに加速する。それは、選手だけではなく、協会やスタッフもさまざまなトライをしているからだ。山本NDのインタビューで、その一端が垣間見えた――。
(取材・森雅史)
■山本昌邦プロフィール■
やまもと・まさくに 1958年4月4日生まれ。
選手時代をヤマハ発動機サッカー部(現・ジュビロ磐田)で過ごし、サッカー日本代表としてもプレー。引退後は指導者の道を歩み、同部でのコーチを務める。その後、日本代表のコーチとしてフィリップ・トルシエ氏やジーコ氏を支え、2004年のアテネ五輪では日本代表監督を務める。そして、ジュビロ磐田の監督に就任し、Jリーグでも指揮を執った。今年2月から、日本サッカー協会のナショナルチームダイレクターの職に就く。