■「ロールモデルコーチは誰でもいいわけではありません」
1月1日のタイ代表戦に向けての活動で、内田篤人と中村憲剛の2人がロールモデルコーチに名を連ねた。両者ともに実績十分であることに、異論はないだろう。一方で、実績のある選手は他にも多くいる。
「ロールモデルコーチは誰でもいいわけではありません。チームにとってどんな効果があるかというのが大切で、どういうエキスを吸い上げてチームに還元してもらえば、いい化学変化が起きるのかということを考えます。
ロールモデルコーチも含めていろんなトライをして、世界の頂点を目指すためにはみんなの力を活用しようというイメージですよね。“日本にはもっと宝がある”とも言えます。
SAMURAI BLUE発表会見で言いましたが、たとえばサイドバックの専門家はとても大切です。サイドバックは今、世界の中でキーワードとして挙がっています。小学生の試合は現在8対8で行われるようになりましたが、この形では、サイドバックというポジションがないんです。つまり小学生ではサイドバックという専門職がいないから、そこは育てていかなければいけないという危機感があるのです。
しかし、日本には欧州チャンピオンズリーグのベスト4をいう経験を持つ内田篤人さんという宝がいるのです。だったら貢献してもらおうということになりました」
このようなロールモデルコーチを含めたコーチ、スタッフに関することなど、ナショナルチームダイレクターは代表チームに関わるすべての案件を処理しなければならない。さらに各選手の招集に関する問題などの解決も行う。現在の代表チームを取り巻く部分ではどんな課題が出て苦労しているのだろうか。
「苦労、ですか。やれることをコツコツとやっていくしかないと思っているので……。苦労と言えば、このタイミングでパリオリンピック予選が4月開催にずれ込んだことですね。通常の1月ならまだJリーグがやっていない時期だったのでよかったのですが、この4月というタイミングはインターナショナルマッチデーではない期間ですから。
これまでに経験のない4月のオリンピック予選を戦わなければならず、しかもその後、7月には本大会が来てしまう。そのマネジメントの難しさに直面しています。Jクラブが選手に多額のお金を払っているのに、そのクラブでの試合を何試合も抜けるっていうのは、もう本当に忍びないと思いますし、クラブはもちろん大変だと思います。そんな中でもクラブの皆さんが、“日本の未来のためにみんなで協力しよう”と言ってくださっているのは、とてもありがたいです。
またヨーロッパの選手たちが増えてきて、その選手を借りることが、非常に難しくなっています。それに対して今後どう対策していくかを、日本サッカー協会とJリーグとが一緒になって、できる限り効率良くできるような仕組みを考えていく必要があると思っています」