大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第127回「小さくても、大きな意味をもっているはずのもの」(2)サッカーの本質を表す卓抜な「小道具」の画像
ペナントのデザインはさまざまだ 撮影:中地拓也

サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、「一瞬のリスペクト」。

■ペナントの歴史

 サッカーの国際試合では、試合前にこうして「ペナントの交換」が行われる習慣がすっかり根づいている。代表チーム同士の試合だけでなく、クラブチームの国際試合、AFCチャンピオンズリーグFIFAクラブワールドカップなどでも「ペナント交換」が行われている。

 この習慣がどう始まり、いつごろから一般化したのか、残念ながらまだよくわかっていない。しかし「なぜペナントを交換するのか」の意味については、「定説」ができている。ペナントを交換することで相手チームの存在を認め、互いに対するリスペクトとフェアプレーを象徴しているとされているのだ。なるほど。

 そう言われれば、たしかにとても素敵な慣習ではないか。ワールドカップ優勝4回を誇るドイツと、ワールドカップではベスト16が最高という日本では、(FIFAランキングはともかく)、天と地のような開きがある。しかし試合は11人対11人で、常に0-0で始まるのである。その試合に先立ち、対等な立場で相手を認め合うというのは、いかにもサッカーという競技の本質を表しているように思うのである。

 その「小道具」として、試合名などを記したペナントを交換するのは、なかなか卓抜なアイデアではないだろうか。

  1. 1
  2. 2
  3. 3