2022年の今ごろ、サッカー日本代表はカタール・ワールドカップを戦っていた。あれから1年、大善戦したカタール大会から、サムライブルーはさらに大きく成長した。サッカージャーナリスト大住良之は、その最大の鍵のひとりが菅原由勢であったと考えている。
■W杯予選でゴール
後半立ち上がりわずか2分のことだった。ペナルティーエリア左外からのFK。久保建英がヒールで小さく動かしたボールに、自信満々の背番号2が走り込んだ。右足から放たれたシュートは、正確に、そして力強くシリア・ゴールの右上隅を貫いた。日本代表8試合目。チームに完全定着して1年目の菅原由勢(AZアルクマール)にとって代表初ゴールは、日本代表に4点目をもたらし、ワールドカップ・アジア2次予選で「最も重要な試合」の勝利を決定づけるものだった。
最新のFIFAランキングで17位に上がった日本代表。ランキングが必ずしも実力を反映しているものでないのはもちろんだが、日本代表の強さはいまや世界が注目するところとなっており、「もっと上でもおかしくない」という声も少なくない。そして私は、「2023年の急成長」の小さからぬ要素が、11月21日のシリア戦で貴重な追加点をもたらした右サイドバック菅原の登場だったと考えている。
もちろん、いまや「力が落ちない2セットの攻撃陣がいる」と言われる前線の選手層の充実ぶりはかつてなかったものであるのは間違いない。欧州のトップリーグで注目選手となった三笘薫や久保などを筆頭に、「国際級」と言える選手がずらりと並ぶ日本の前線の選手たちは、どんな試合でも相手に脅威を与える。しかし「チームとしての強さ」を考えれば、ことし最も大きく伸びたのは右サイドからの攻撃力であり、そのキーが菅原であった。