■イスラム法に背くとの懸念

 サウジアラビアでサッカーが広くプレーされるようになったのは、第二次世界大戦後のことである。アラビア半島の中央部は18世紀半ばからサウド家(現在も続く王家)の支配地だったが、オスマン帝国などの侵略を受ける時期もあり、「サウジアラビア王国」として成立したのは1932年のことだった。1938年には石油が発見され、第二次世界大戦を経てイギリスやアメリカの資本がはいるようになり、近代化が進んだ。

 第二次大戦前のサウジアラビアでは、宗教上の理由から西欧のスポーツは禁止されていた。今でも、トレーニングに時間を取られたり、ファンがテレビやスタジアムで試合を観戦することがイスラムの法に背かないのかと、懸念する人も少なくないらしい。

 しかし石油産業に従事する英国人の技師や労働者が増えるに連れ、スポーツが一般化し、国王も国民の健康増進のスポーツを奨励するようになって本格的な活動が始まった。スポーツ観戦も、「宗教的義務(1日5回のお祈りなど)に影響を与えないのであれば違法ではない」と言われるようになり、スポーツ熱を加速した。サウジアラビア・サッカー協会の設立は1956年。同年にFIFA加盟も果たしている。ただしアジアサッカー連盟(AFC)への加盟は1972年と、やや遅れている。

 協会設立前には、いくつかのクラブの「連合チーム」がエジプトのチームと試合をしたりしていたが、1953年に後に国王となるサウド・ビン・アブドゥルアジズ皇太子がシリアを訪れる際に初めて「サウジアラビア代表」を組織、国内での1週間の合宿の後、シリアのトップクラブである警察チームと対戦したという記録が残されている。サウジアラビア・チームには監督がおらず、キャプテンがその役割を務めたという。

  1. 1
  2. 2
  3. 3