■やりきれない思い
2つの試合を思い出す。ひとつは2012年のロンドン・オリンピックのサッカー女子F組最終戦「日本×南アフリカ」。そしてもうひとつは、2018年ワールドカップ・ロシア大会のH組最終戦「日本×ポーランド」である。前者では大会日程を考慮して佐々木則夫監督が後半半ばに「グループ2位」になることを目指して0-0のまま引き分けることを指示した。そして後者では、0-1のビハインドという状況にもかかわらず、他の試合会場の途中経過(同時刻キックオフだった)を見て「勝ち点、得失点差、総得点、対戦成績」のいずれもが同じで、わずかに「フェアプレーポイント」で勝ることを計算した西野朗監督が同点ゴールを狙わずにパスを回すことを指示した。
2012年の場合、なでしこジャパンは生き残りの瀬戸際にいたわけではなく、より日程的に(試合会場への移動がなく)有利な状況をとるためだった。佐々木監督の意図はよく理解できたが、対戦した南アフリカの監督が「世界チャンピオンと引き分けた。選手たちを誇りに思う」と無邪気に喜んでいた姿を見た後に「意図的に引き分けた」というコメントを聞き、やりきれない思いになった。