なでしこジャパンの戦いぶりが、話題となった。今年の女子ワールドカップで話題となったような果敢な戦いぶりではなく、その対極にある姿勢が問題視されたのだ。そうした戦いぶりはどうして生まれ、今後にどういう影響を及ぼしかねないのか、サッカージャーナリスト・大住良之がつづる。
■大きな葛藤
前半15分に千葉玲海菜のシュートがゴールを破った後、自陣に戻ったなでしこジャパンはMF熊谷紗希主将を中心に円陣を組んだ。そして「この後の戦い方」を徹底したのである。
10月29日、オーストラリアはフィリピン戦が15時10分(タシケント時間で12時10分)キックオフと、タシケントの「ウズベキスタン×日本(17時キックオフ)」よりはるかに先んじていたから、全力でフィリピン(けっして弱いチームではない)を倒しに行った。この日のパースでの試合は、地元オーストラリアの試合が先で、「イラン×チャイニーズ・タイペイ」は同じスタジアムで3時間後の18時10分キックオフだった。ウイークデーなら逆の試合順になるのだが、この日は日曜日だった。
もし立場が完全に逆だったら、オーストラリアのトニー・グスタフソン監督(スウェーデン)はどうしただろうか。おそらく、池田太監督とまったく同じ決断をしたのではないだろうか。オーストラリアにとっても、スペインやノルウェーを一蹴したなでしこジャパンとオリンピック出場をかけて「準決勝」で当たることは避けたかったに違いない。
「2-0になった後には得点を取らない」という決断は、けっして容易なものではなかったはずだ。池田監督には大きな葛藤があったに違いない。