■漢字が通用する理由

 ベトナムを訪れるのは、これが3回目でした。

 最初は2007年に東南アジア4か国共同開催のアジアカップの時でした。日本はB組に入り、グループリーグは3試合ともベトナムの首都ハノイのミーディン・スタジアムが会場だったので、その間、ずっとハノイに滞在。7月の暑さが身に堪えました(ベトナム南部にあるホーチミン市は「常夏」で雨季と乾季があるだけですが、北部のハノイは冬場にはかなり涼しくなります)。

 2回目も、ハノイ。北京オリンピック予選のベトナム戦を見に行きました。

 ハノイの一角に「文廟」と呼ばれる観光地があります。孔子をお祀りしてある「孔子廟」です。ベトナム語なら「ヴンミョウ」ですが、日本のガイドブックにも漢字で「文廟」と書いてあることが多いようです。

 ベトナムというのは、広い意味での中国文明圏です。東アジアの中国文明圏では、天(神)によって選ばれた中国の皇帝が世界の中心であって、周辺国の国王は中国皇帝から任命されるものでした。国王は皇帝に対して使者を送って朝貢します。また、皇帝からの使者は国王に対して上座に立ちます。

 たとえば朝鮮の国王はこうして中国皇帝に服属し、朝鮮では中国の皇帝が定めた年号を使っていました。だが、それはあくまで形式的なこと。皇帝は各国の内政に口を出したりはしません。

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