大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第123回「サッカージャーナリストが『絵はがきじいさん』をする理由」(2)過密日程にも打ち勝つライティングの秘訣の画像
郵便ポストは赤いとは限らない。黄色の国、青の国、オレンジ色の国と、色も形もさまざま。しかし日本ほど間近にポストを見つけられる国や町は少ない (c)Y.Osumi
 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は「10グラムの思い」。

■2週間で58試合の過密日程

 ロンドン・オリンピックは、私にとっては1998年のワールドカップ・フランス大会以来の忙しさだった。オリンピックでは、2週間という大会期間に男子16チーム、女子12チーム、計58試合をこなさなければならない。開会式の2日前から試合が始まるのはそのためである。試合は女子の試合の翌日に男子の試合、1日おいて再び女子、翌日に男子という形で決勝まで続いた。

 試合はロンドンを離れ、スコットランドのグラスゴー、ウェールズのカーディフを含めた5つの地方都市でも行われた。女子の試合の前日は移動日である。女子の試合を取材して何本もの記事を書き、翌朝移動して男子の試合を取材、試合後にまた多くの記事を書き、翌日は次の女子試合会場に移動というスケジュールとなる。

 こうした「過密日程」だけでなく、日本代表の奮闘も私を多忙にした。前年に女子ワールドカップを制覇したなでしこジャパンはもちろん、関塚隆監督率いる男子代表も面白いように勝ち上がり、両チームとも大会の最終盤(決勝戦と3位決定戦)までそれぞれ6試合戦ったのである。試合のない日には次のラウンドの展望記事のリクエストまできたから、目の回るような忙しさだったのだ。

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