お祭り状態という言葉があるが、その表現がこれほど似合う空間もなかった。2023年10月24日のBGスタジアム。この日、ACL第3戦としてタイ王者のパトゥム・ユナイテッドが川崎フロンターレを迎えた。
そのパトゥムのサポーターが陣取るゴール裏の席のさらに裏側に広がる空間に、両チームのサポーターが集まった。これは、その場の空気で盛り上がって集まったわけではない。事前に、多くの連絡を取り合ってのものだった。
その架け橋となったのは、チャナティップ・ソングラシン。現在30歳のタイ代表MFだ。ご存じの通り、チャナティップは今年6月まで川崎フロンターレに所属していた。しかし、母国リーグへの復帰を決断し、新天地にBGパトゥム・ユナイテッドを選んだ。2018年までバンコク・グラスFCと名乗っていたように、バンコク中心部から車で40分ほどの場所にクラブハウスがある。スタジアムはそこから歩いて行ける距離だ。
昨年、川崎はアジアツアーとしてタイを訪問。このパトゥムと親善試合を実施したが、その際、チャナティップが所属していたのは川崎。そして今回、ACLという真剣勝負で同じグループに入るという見事な巡り合わせを見せた。とはいえ、先述したお祭りムードの要因はそれだけではない。あるサポーターの愛に依るところが大きい――。