■日本にはなかった発想
“自社ビル”を持っていることには感心していたものの、僕は内心「ビルはオンボロだなぁ」とタカを括っていたのです。ところが、ある時、本当に感心せざるをえない事実を目にしました。
昔の試合の記録を調べたくて、蹴球会館を訪れたついでに顔見知りの事務局員に「メンバー表など昔の試合記録は残ってますか?」と訊いてみたのです。そうしたら、「じゃ、ついてきて」と言って、彼は急な階段を昇っていくのです。
すると、そこはコンピュータ室になっていて、試合の日時などを入力すると試合記録がプリントアウトされて出てきたのです。
まだ、1980年代末のことでしたから、ドット数も少ないギザギザのフォントでしたが、ハングルは漢字などと違って画数が少ないので読みやすくて助かりました。
これには、本当に感心したのです。
なにしろ、当時の日本サッカー協会には記録の保存や管理などという発想自体がなかったからです。記録を探しに行くたびに「そんな昔の記録はない」と言われるので、探すのが面倒くさいからそう言っているのだろうと思っていたのですが、後から聞くところによると記録用紙は本当に何年か保存しただけで廃棄してしまっていたというのです。