サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は「後ろ手ディフェンスが嫌いな理由」。
■未知の競技だったサッカー
当時、日本のサッカーは完全なマイナー競技で、1964年の東京オリンピックを前に、日本サッカー協会(当時の正式名称は日本蹴球協会)は血眼になって日本代表の強化に取り組んでいた。日本代表が(1936年のベルリン・オリンピックを除くと)デットマール・クラマーさんの指導を受けるべく、初めて欧州遠征を敢行したのは、この年の夏だった。だが当時の日本には、サッカーをプレーした人だけでなく、実際に競技を見た人の数さえ、とても少なかった。
そうした時代に、小学校の先生たちがサッカーを単に「足でボールをける変な競技」と考えたとしても不思議ではないし、大きな落ち度と言うこともできない。そして足でボールをけることと同時に、彼らの心を強く縛っていたのが、「手を使ってはならない競技」という強迫観念のようなものであったことも、想像に難くない。サッカーという競技を他の競技から際立たせている特徴は、「手を使わないこと」と、「頭でボールを打つこと」の2つであるからだ。