■教師も悩んだ指導法
小学校3、4年生のときに私のクラスを担任していた先生は女性だったが、彼女がサッカーという競技をまったく知らず、ただ「手を使わずに足でける」といったイメージだけで私たちの体育の授業に臨んでいたことは間違いない。ただ、繰り返して言うが、私はそれは仕方のないことで、まったく彼女の責任ではない。
3、4年生の体育の授業におけるサッカーは「ラインサッカー」である。その授業を始めるに当たって、先生は「サッカーは手でボールを扱ってはならない競技よ。みんな、両手を体の後ろで組みなさい」と言った。これもきっと、新しい種目の授業方法を伝える研修会のなかで、指導者から教えられたことだったに違いない。
言われたとおり、私たちはみんな両手を体の後ろに回して組み、目の前にころがってくるボールに対し、力いっぱい足を振った。決められた時間のなかで、私が何回キックするチャンスがあったのか、覚えていない。おそらく、数回あったかなかったかだろう。ボールのけり方も知らない。もちろんつま先でけるトーキックだっただろう。ボールは思いどおりになど飛ばないし、楽しさなんて、かけらもなかった。
小学校3、4年生の「ボール運動」には、「キックベースボール」という競技もあった。サッカー用のボール(特別なものはなく、ドッジボール用のボールだった)を使い、「ピッチャー」が手で転がしたボールを足でけってあとは野球と同じだった。野球は誰にもなじみのある競技で、けったら一塁に走り、続く「バッター」のキック次第で塁を進んでホームを目指すことなど、先生に教えられなくてもわかっていた。