■2強が招いた他チームの戦い方
今シーズン、横浜FMに対抗して上位争いを繰り広げた神戸や名古屋、さらには浦和、鹿島といったチームは、プレスをかける位置など「守り方」にはそれぞれ違いがあるものの、カウンター・サッカーという点は共通している。
かつてポゼッションサッカーを目指した神戸も、吉田孝行監督の下でショートカウンターを武器として強化してきた。そうした中で、ポゼッションサッカーの象徴であるアンドレス・イニエスタは神戸で居場所を失い、今シーズンは大迫勇也や武藤嘉紀が輝きを放つこととなった。
つまり、神戸は高い位置からのプレッシングで相手ボールを奪い、ショートカウンターで仕留めるという戦い方で勝点を積み重ねてきた。一方、横浜FMは前シーズンまでのようにうまく機能しなくなっているにしても、最終ラインからパスをつないでビルドアップし、両サイドバックがオーバーラップ、インナーラップをしかけてサイドから崩すチームというコンセプトを捨てていない。
GKやDFがビルドアップのパスを回す中でミスが起こってピンチを招く場面はかなり見かけるが、それでもケヴィン・マスカット監督は「後方からのビルドアップ」というコンセプトを捨てるつもりはないと公言している。
従って、両者の直接対決となった第29節でも、横浜FMのビルドアップに対して神戸が前線からプレスをかけるような展開が予想された。
だが、試合が始まってみると、神戸は横浜FMの最終ラインに対して激しいプレスをかけに行かなかった。
プレッシングをかけるよりも、神戸はまず横浜FMのサイドバックが攻め上がるスペースを埋めることに注意を払った。