プロサッカーチームで表立った行動が注目を浴びるのは通常、選手でありスタッフである。しかし今回の『えがお共創プロジェクト』の主役はクラブスタッフであり、ANAや富士通といった協業企業であり、そして、現場でアテンドしたサポーターだ。
今回のそれは、感覚過敏などの理由で外出やサッカー観戦が困難な子どもとその家族に、安心して観戦できる特別な環境を用意して楽しんでもらおうといったもの。具体的には、9月29日のJ1リーグ第29節アルビレックス新潟戦に11組33人を招待し、特別な環境での観戦を提供したのである。
では、そうした行動をピッチ上を現場とする選手やスタッフはどのように見ているのか。その日の翌日、クラブハウスの前で鬼木達監督に聞いてみると、「悔しさが残る」と率直な気持ちを言葉に表した。
指揮官は、「僕らは、本当になんだろう……。そういう子どもたちもそうですし、他のイベントなどでいろんな招待するときもそうですけども、やれることって、そのゲームの勝利とか内容で何を見せることができるかだと思うので」とまずは口にしたのだった。
たとえば当日、試合に出る選手は入場時にハイタッチをしたものの、勝ち負けがかかった真剣勝負の場で実際にアテンドすることはかなわない。その状況でできることは限られているからこそ、鬼木監督は心を動かす試合を見せることが自分たちにできることだと話す。そして、こう続けたのだった。
「感動を与えられるようなゲームをしなきゃいけない思いが強いので、だからこそ(新潟戦は)悔しさが残りますよね。自分たちの目指すものが何か、そこはしっかりと考えなきゃいけない」
指揮官は常々、目指すものの一つを心を動かす試合を見せることだと話す。たとえばこの日は久々に土曜日に公開された練習日となったが、わずか10分前までそのサポーターが立っていた場所に視線を向けながら、「やっぱりこういうときこそというか、期待に応えたい気持ちは強いです。こういう(苦しい)ゲームの後にこうやっていっぱい来てくれるっていうのは選手も勇気づけられますよ。本当ありがたいことですよね」と、口にした。多くの人がこうしてチームにかかわり、気持ちを共有することは、チームとしても指揮官としても、視線の先に見据えるものの一つである。