■10年前にはなかった光景

 先ほど、5部リーグの試合も、それなりにテクニカルであり、また戦術的な試合だったということを紹介したが、女子の2部リーグでも、あるいは(たいへんに失礼な言い方だが)南房総の小さな港町のクラブでも、これだけの試合ができているのだ。

 考えてみれば、これは大したものと言うしかない。

 そして、男子5部リーグの試合にも、女子の2部リーグの試合でも、それぞれ熱心なサポーターが来場していた。

 こんな光景は、たとえば10年前、つまり日本女子代表(なでしこジャパン)が女子ワールドカップで優勝した頃には考えられないことだった。当時は代表クラスの一握りのトップ選手たちが抜きんでており、当時日本のトップリーグだった「なでしこリーグ1部」でも、下位チームは戦略性もなく、ただボールを追いかけるだけのようなチームがあった。

 男子5部リーグでも、女子の2部リーグでも、ちゃんとした試合が見られるようになったというのは、フットボールというスポーツが日本の社会の隅々にまで浸透してきた証拠でもある。

 また、人数は少ないにしても、Jリーグ並みのサポーターがいて、試合中は声をからして声援を続けている。「Jリーグの理念」は、Jリーグの枠を越えて社会に浸透しているようだ。

 女子の日本代表が女子ワールドカップで自分たちでボールを動かす素晴らしいサッカーを披露し、また、男子の日本代表がワールドカップでドイツ、スペインを破り、またアウェーでの親善試合でドイツ代表を圧倒することができたのも、日本にフットボールが浸透したからこそ可能になったのだ。

 日本人の若い選手たちが、プレミアリーグやラ・リーガで活躍しているのも、日本のサッカーが広い裾野を展開し、全体がレベルアップしているからこそなのだ。

 この週末は、下部リーグの試合を観戦して、そんなことを考えさせられたのである。

 サッカーの話題がJ1の優勝争いや代表チームのワールドカップ予選などに集中してしまうのも当然のことだとは思うが、それを支えている下部リーグにも注目すべきだろう。

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