■リバプールで求められるもの

 ボーンマス戦でアレクシス・マクアリスターが退場したこともあり、27日の次節・ニューカッスル戦は初先発が有力視される遠藤。そこで問われるのは攻撃の起点となるパス出しの力だろう。日本代表ではそういう役割を鎌田大地ラツィオ)や守田英正スポルティング・リスボン)に託すことが多く、シュツットガルトでは自らボールを持ち上がってフィニッシュに行っていた遠藤。だが、リバプールでは最前線にディオゴ・ジョッタやモハメド・サラーらがいて、彼らを生かす配球が求められてくるからだ。

 とりわけ、サラーは背後に抜け出す仕事を得意とするタイプ。彼に阿吽の呼吸でスルーパスを出せるようになれば、間違いなく重要視されるだろう。シュツットガルトで攻撃の起点となる仕事に磨きをかけてきた遠藤ではあるが、代表の先輩・遠藤保仁(磐田)や中村憲剛(川崎FRO)のような針の穴を通すようなパス出しはやっていなかった。その術を身に着けられるか否かは今後の動向を大きく左右する可能性が高そうだ。

「類まれな自己解決能力」と恩師・曺貴裁監督(京都)から絶賛されている彼ならば、この課題にも取り組み、必ずハードルを越えていけるはず。その経験値を日本代表に還元してくれれば、森保監督にとっても大きな武器になるに違いない。

「自分は自分なりの新たなキャプテン像を作っていきたい」と6月の代表活動時に遠藤は意欲を示していたが、リバプールで攻守両面を動かせるようなスーパーMFになれれば、ドイツで15年以上プレーしてきた長谷部誠フランクフルト)、世界5か国を渡り歩く吉田麻也(LAギャラクシー)ら歴代キャプテンを確実に越えられる。

 この移籍を機に、彼には壮大なスケール感を備えた名手になってほしいものである。

(取材・文/元川悦子)

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