大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第118回「アジアカップは熱い(暑い?)」(1)日本代表と同宿取材ができた時代の画像
1975年、アツいアジアカップ予選があった(写真はイメージです) 撮影:中地拓也

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回のテーマは半世紀前のアジアカップの「アツさ」について。

■忘れられない「暑さ」

 暑い。毎日暑い。台風が来ても、去っても暑い。この暑さに、Jリーグの試合も多少だれ気味な感じがする。ことしは10月まで暑いという予報があるようだが、これでは、8月開幕の「秋春制」など無理で、6月から9月いっぱいはオフにしなければならないのではないかとまで思ってしまう。

 暑いといつも思い出すのが、2つの海外での取材である。ひとつは1997年9月のワールドカップ・アジア最終予選のUAE戦(アブダビ)。気温だけだったら、間違いなく最も暑い試合だった。キックオフは午後5時40分で、太陽は西に傾いていたが、気温は間違いなく体温を超えていた。試合は0-0の引き分けに終わったが、このコンディションでよく勝点1を稼いだと思ったほどだ。

 だが「暑さ」は気温だけで決まるものではない。屋根の下の記者席に座っているだけで全身に滝が流れるような汗をかいた遠い記憶がある。半世紀近く前の6月、香港で取材した「アジアカップ予選」である。気温も高かったが、何よりも湿度がものすごかった。

 そもそも人間が汗をかくのは、その汗が皮膚から蒸発することで「気化熱」を奪い、体温の上昇を防ぐという仕組みになっているためである。ところが湿度が高いとその蒸発が進まない。そのため体温が下がらず、「暑い」と感じた体はさらに汗を出そうとする。それが「滝のように流れる汗」になる。

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