■バブルの胎動
コロナ前まで、世界のサッカーで「爆買い」といえば中国だった。河北華夏で2016年から4年間プレーしたアルゼンチン人FWエセキエル・ラベッシの年俸は約60億円だったと伝えられている。それがサッカー選手として当時世界ナンバーワンの「高給取り」だった。中国サッカーのバブルが去ったと思ったら、文字どおりケタ違いの勢いで「サウジアラビア・バブル」がやってきたことになる。
クリスティアーノ・ロナウドはことし1月からサウジアラビアでのプレーを始めた。所属するアルナスルはそれまで平均入場者が7000人程度だったが、2万人にまで跳ね上がった。しかしどうやらそれは単なる「観測気球」だったらしい。この夏の欧州の移籍市場は、サウジアラビア・マネーのうわさでもちきりになったからだ。
5月、サウジアラビアのファンド会社「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」が、アル・イテハド、アル・アハリ(ともに本拠地はジッダ)、アル・ナスル、アル・ヒラル(ともにリヤド)の4クラブの買収を発表した。PIFは、サウジアラビア政府(すなわちサウジの王族)が100パーセント出資する「国営投資企業」である。PIFがサウジアラビアを代表する4クラブのオーナーになったということは、この4クラブが事実上無制限の資金力をもったことを意味している。