後藤健生の「蹴球放浪記」第168回「戦車に違和感がないロストフの街」の巻(2)ロシア・ワールドカップで目にした「戦勝記念」の画像
ロストフ中心街に展示されていた戦車 提供/後藤健生

 ウクライナに侵攻しているロシアの混乱は、日本のテレビ番組でも連日報じられている。国際ニュースをチェックする蹴球放浪家・後藤健生の目に、馴染みある町が映った。2018年に日本代表が悲劇に見舞われた「ロストフ・ナ・ドヌー」である。

■2つのロストフ

「ナ・ドヌー」というのは「ドン川に面した」という意味です。「ナ」は英語の「on」と同じ前置詞。「ドン」という名詞が格変化をして「ドヌー」となります(ドン川はモスクワの南から南流してアゾフ海に注ぐロシアの大河の一つです)。

 モスクワの北200キロほどの所にも「ロストフ」という都市があるので区別するためです。北のロストフ(ロストフ・ヤロスラフスキー)は人口3万人の小都市ですが、ロシアの中で最も古い町の一つと言われる重要な街です。

 同名の都市を区別するために川の名を付ける例は他にもあります。

 たとえば、ドイツには「フランクフルト」という都市が2つあります。長谷部誠が所属するアイントラハト・フランクフルトがある「フランクフルト・アム・マイン」はヨーロッパ中央銀行がある金融の町で、「マイン河に面するフランクフルト」と呼ばれます。一方、旧東ドイツにある町は「フラクフルト・アン・デル・オーデル」となります。ポーランドとの国境オーデル川に面しているからです。

 文豪、ウィリアム・シェークスピアが生まれたのはイングランド中部の「ストラスフォード・アポン・エイヴォン」。つまり、エイヴォン川に面したストラトフォードです。

 もう一つ有名な「ストラトフォード」は、ロンドン東部の地区名です。ウェストハム・ユナイテッドの本拠地であり、つい先日はアメリカのメジャーリーグ・ベースボール(MLB)のセントルイス・カージナルス対シカゴ・カブスの公式戦が行われたロンドン・スタジアム(2012年オリンピックのメイン・スタジアム)がある地区です。

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