■ドイツで生まれた「プレス」
ところで、「記者席」の事を英語では「プレスボックス」と言います。
「プレス」というのは「印刷」という意味で、派生して「出版」や「新聞」、「記者」といった意味でも使われます。
1440年にドイツ・マインツの技師ヨハネス・グーテンベルクが印刷機を発明しました。それまで、本というものは手で文章を書き写す「写本」という方法で作られていましたが、印刷機の発明によって出版物を安価に大量生産することが可能になったのです。
人類にとって革命的な発明の一つでした。
その、グーテンベルクの印刷機は実はワインを作るためにブドウの果実を搾る圧搾機を改造したものだったのです。ワイン用の圧搾機は「プレス機」と呼ばれていました。圧力をかけて果実を搾る機械という意味です。
そのため、グーテンベルクの印刷機も「プレス」と呼ばれ、その後「印刷」とか「出版」、「新聞」のことにも「プレス」という言葉が使われるようになったのです。
今でも、僕たちはJリーグの試合を取材に行くと、スタジアム入口で警備の人に「プレスで~す」と声をかけて受付に向かいます。
「プレス」は分かりました。では、「ボックス」というのは何なんでしょう?
「ボックス」は「箱」ですよね。なんで、記者席が「箱」なのか……僕はずっと不思議に思っていたのです。
しかし、1999年にマンチェスター・シティの当時のホーム、メイン・ロードの記者席に座って分かりました。たしかに、そこは「箱」だったのです。