古巣で再出発した香川にとって追い風になっているのが、小菊監督によるインサイドハーフ起用だろう。柏戦では原川がアンカー、香川と奥埜が両インサイドハーフに陣取り、敵の出方に呼応して2ボランチ気味にするなど、臨機応変に形を変えながら、最適解を見出そうとしていた。
「アンカー脇の位置に柏の10番(マテウス・サヴィオ)と小屋松(知哉)が立っていて、仙頭(啓矢)もいたので、そこは僕1人では間に合わない。3人で話ながら、オク君(奥埜)を落とす感じでやりました」と原川も意思疎通を密にしていたことを明かす。
香川がしっかり中盤をコントロールすることで、原川の守備強度が増し、奥埜も持ち前の攻撃の推進力を出せるようになる。そういったプラス効果があるのは確かだ。
「真司君は経験豊富でどんどんボールに関わってプレーする選手で、本当にミスが少ない。真司君がボールを多く触った方がチームのリズムもよくなるんで、僕は相手の動きを見ながらポジションを取ったり、敵を引き付けて味方を自由にプレーさせることを意識しています」と奥埜も役割が明確になっている様子。彼ら中盤トリオの連携面が研ぎ澄まされてきたことも、セレッソ浮上の重要ポイントになっていると言っていい。
「4-3-3を始めた時はエラーや課題もあった。が、原川含めた3人のスペースを見つける目、ローテーションのタイミング、経験とクオリティはチームの素晴らしい武器になっている。これから時間を積み重ねていくことでもっとよくなる」と小菊監督も手ごたえを強調。「真司のベストポジションはインサイドハーフ」ともコメントしており、期待通りの効果が出ていると考えているのだろう。
おそらく指揮官の中では、ハビエル・アギーレ監督時代の日本代表、あるいはトーマス・トゥヘル監督時代のドルトムントの中盤のイメージがあるのではないか。
前者の香川はアンカー・長谷部誠(フランクフルト)、インサイドハーフの遠藤保仁(磐田)とともに攻守両面で光るものを見せていた。後者に関しても、アンカーのバイグル(ボルシアMG)、インサイドハーフのギュンドアン(マンC)と連動性の高いパフォーマンスを披露し、新境地を開拓していた。
もちろんトップ下や2トップに入る時に比べると得点数は少なくなるが、奥埜が指摘する通り、香川はボールを持ちながら周りを動かし、自らも決定的な仕事をするタイプ。34歳になった今はその傾向が一段と強まっている。プロ入り前から見ていた小菊監督はそのあたりをよく理解しているから、あえてこの位置で起用し、香川を中心にチーム全体を円滑に動かそうとしているのだろう。