「合計30億人ものマーケット」中国とインドのサッカー界へのアピール【ピッチ内外で見えたアジアサッカーの「もう一つの横顔」】(3)の画像
巨大なカネが動くマーケットは、FIFAを魅了する 写真:渡辺航滋

 世界のサッカーは日々、目まぐるしく変化していく。日本が属するアジアも、例外ではない。ピッチ内外で見え始めたアジアサッカーの「もう一つの横顔」にサッカージャーナリスト・大住良之が迫る。

■サウジアラビアの問題

 2021年には、サウジアラビアの投資ファンドがイングランド・プレミアリーグのニューカッスル・ユナイテッドを買収したことが発表された。イングランドのサッカー界には、すでにカタールやアメリカのなどの外国資本が注入されているが、遅ればせながらサウジアラビアも加わり、スター選手の獲得争いはさらに過熱しそうだ。

 ところが、こうした「攻勢」一方だったサウジアラビアのスポーツ誘致に思いがけないブレーキがかかった。ことし6月から7月にかけてオーストラリアとニュージーランドで開催されるFIFA女子ワールドカップである。この大会の公式スポンサーのひとつとして、FIFAはサウジアラビア観光公社との契約をまとめようとした。しかし計画観光都市ネオムをつくるにあたって、この地域で暮らしていた47人の少数民族を強制的に排除し、移住させたという「人権問題」が問題とされ、人権活動家だけでなく、選手やオーストラリアとニュージーランドのサッカー協会が強硬に反対し、結局、契約はまとまらなかった。

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