シュート場面と競り合いで活きる日本人独特の身体の使い方「なんば」の体重移動【久保建英に感じるサッカーと日本の武術の融合】(2)の画像
好プレーを続ける久保建英 撮影:中地拓也

 サッカーはワールドワイドなスポーツへと成長した。一方で、本場のヨーロッパを中心に均一化している面もある。その中で、日本は日本らしさを貫くことが強化へのヒントになるかもしれない。久保建英のプレーが示唆する可能性を、サッカージャーナリスト・後藤健生が考察する。

■武術につながる久保の動き

 最近の久保は、ボールの奪い合いの場面で競り勝つ場面が多くなっている。つまり、コンタクト・プレーでも負けていないのも体をうまく使っているからだ。そうした場面でも、自分の体をうまく使って戦っているように見える。

 日本サッカー協会の資料を見ると、久保建英は身長173センチ、体重67キロとなっている。日本人としても、けっして大きな選手ではない。最近は体幹の強さを感じるようになってはいるものの、けっしてフィジカル的に「強い」選手ではない。だが、それでも久保はフィジカル・コンタクトで負けないのだ。

 ここでも、久保は体をうまく使って戦っている。フィジカル・コンタクトを避けるために相手から離れて“逃げる”のではなく、逆に相手の懐に入って間合いを詰めることによって相手のエネルギーを吸収してしまっている。そして、体の軸をうまく移動させることによって相手のエネルギーをうまく逃がすことで相手をかわしている。相手選手の勢いをまともに受けることなく、スルッと入れ違うように回転して前を向いて、すぐに次のプレーに移るという、非常にスムースな動きである。

 こうした、うまく体を入れ替えて、重心の位置をずらしながら相手をかわしたり、体重を移動させるエネルギーを利用してシュートを放ったりする場面を見ていて、僕は日本の武術を連想した。

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