■先陣を切ったのは大相撲

 この間、他の競技では「ビデオ判定」が次々と導入されていった。

 先鞭を切ったのは、なんと伝統と格式を誇る日本の大相撲だった。

 大相撲では、微妙な勝負でも行司は必ずどちらの勝利かをジャッジしなくてはならない。この判定に疑問がある場合には土俵下に控える5人の審判員(親方)が「物言い」を付ける(審判員だけではなく、土俵下に控えている力士も「物言い」を付けることができる)。そして、審判員が土俵の上に上がって協議するのだが、この時「ビデオ室」にいる親方がビデオをチェックして土俵上の審判員に伝え、最終的には土俵上の審判員が判定を下すのである。

 このビデオ判定システムは、実に半世紀以上前の1969年の5月場所から導入された。

 その前の場所で、昭和の大横綱、大鵬幸喜が前頭筆頭の戸田智次郎に敗れて連勝記録が45でストップしたのだが、映像や写真によって実際には戸田の足の方が早く土俵外に出ていたことが明らかになってしまった。この重大な「誤審」をきっかけに、大相撲はいち早くビデオ判定を導入したのだ。

 その後、2000年代の後半頃になると、多くの競技でビデオ判定が使われるようになった。

(4)へ続く
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