■山根「別に誰がどこに居てもいい」
右サイドから左サイドに走り込んでこの得点に関わった山根は「カウンターみたいな感じでしたよね。速めにボールが動いてて、前に人数がいなかったんで」とそのシーンを振り返りつつ「僕がたぶんいい位置にいたんで、ランニングを掛けて」と自らの判断を説明した。
そして「別に誰がどこに居てもいいし、前に人が掛かってるということが大切だと思うので。あの時は僕が行った方がいいと思ったので、前にスプリントを掛けました」と言う。そして、そんな山根個人の判断に周囲の選手も合わせてくれているのだという。
「僕の動きを見て合わせてくれる選手達も多いです」
そうした山根のトリッキーな判断を柔軟に受け止められるのは「複数のポジションを出来る選手が多い」から。そして「誰がどこに居なきゃいけないっていうのは、あんまりないかなと思っています」という考えがチーム内に浸透しているからだとも言える。
これはつまり、川崎の選手たちが流動的になる瞬間のサインがあるわけではないということ。流動的に動いたほうがゴールになる可能性が高いとの判断で動くわけで、対戦相手が対応するのは難しくなる。鳥栖を相手に様々な形で得点を積み重ねた川崎ではあるが、その中でも特に印象的な一点だった。
【江藤高志】
えとう・たかし/大分県中津市出身。IT系出版社で雑誌や書籍などを編集していた1999年に、パラグアイで行われたコパ・アメリカを観戦。これを機にサッカーライターに転身した。当初は故郷のJ2クラブ、大分トリニータを取材。石崎信弘監督との縁もあり、2001年途中から川崎フロンターレの取材を開始した。15年から『川崎フットボールアディクト』を創刊し、編集長として運営。今に至る。