皇后杯の決勝が行われ、日テレ・東京ヴェルディベレーザが2大会ぶりの優勝を果たした。INAC神戸レオネッサから4ゴールを奪って勝利したこの試合で見えてきた新たな潮流をサッカージャーナリスト・後藤健生がつづる。
■「決勝戦らしい試合」
観戦していた日本代表の池田太監督は「さぐり合うような試合」と形容したが、いわゆる「決勝戦らしい試合」だった。
両チームとも、けっして守りに入ったわけではない。
ベレーザは、これまでスリートップでスタートして、試合の流れを見ながら左サイドに置いた小林里歌子を中央に移してツートップに変更することで攻撃のギアを上げる戦い方をしてきていたが、決勝戦ではスタートからツートップ(あるいは、小林をトップ下とする4-2-3-1)で戦って、攻撃への意思を示していた。
しかし、両チームとも慎重に戦ったのは「決勝戦らしい」戦い方だった。
I神戸は、WEリーグでも7試合を終えて失点はわずか5点と、もともと堅守を誇るチームだ。ベレーザがトップに入れてくるボールをスリーバックがことごとく跳ね返し、中盤でも激しく体を寄せてボールを奪った。
公式記録によれば、ベレーザは前半8つの直接FKを得ていたが、後半は1回だけになった。前半は、激しくボールを奪いに来るI神戸のプレーがファウルになっていたのだ(後半のベレーザは、ファウルを受けることもなくなった)