■名願「自分は相手によってドリブルを変えられる」

 名願はこの試合で、鮮やかに抜き去る場面を多々見せながら、先述したような重戦車ドリブルも見せた。この点について試合後に尋ねると、「自分は相手によってドリブルを変えられる。なので、自分が抜ききれるなと思ったらきれいに交わすし、多少、タックル受けながらでも抜ける感じなら強引にでも行くという風に変えています」と冷静に語ってみせた。

 ドリブルを使い分けられるからこそ、必要となるのがその見極めということになる。そして、この取材で何度も出てきた言葉が、「状況判断」だった。

 たとえば、プロと高校との違いについて尋ねてみると、「高校と違って一人ひとりの強度が全然違う。高校のときは強引に行くことが多かったんですけど、プロになってからは他の選択肢も使えれば自分のプレーの幅が広げられると思っているんで、そこは、また違った状況判断をするようにはしています」と答えている。

 また、「自分がボールを持った状況が良ければ、相手が一人二人だったら抜ける自信があるんですけど、相手が3枚となると自分のところに偏っている」。だからこそ、「その場合は他のところを使っていくほうが効率的かなと思うんで、そこの状況は判断するようにはしています」とも話している。

 そして、その判断を支えるのがドリブルの姿勢だ。
「(自分は)顔が上がっていてそのままドリブルできるんで、状況判断というのは一つ自分の中の選択肢が増えると思います」

 視野を確保できているからこそさまざまな選択肢を確保でき、そして、判断を下すことができる。一方で、試合に入る前からその状況判断はすでに行っていることも、感じられた。

 名願が出場したのは先述したように2本目の途中からなのだが、外から見ているときに相手に“スキ”をすでに見つけており、「そこに仕掛けていけてなくて点が取れていなかったので、自分が入ったらそこは積極的に仕掛けて、相手のラインを下げるだったり、そういうものを見せていくことで、もっと自分たちがゲームを握れるんじゃないかと思っていた」とも語っていたからだ。

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