■プランBの準備

 アルゼンチン戦に向け、ファンハール監督は「プランB」を用意し、このトレーニングもしっかりと行っていた。ビハインドの状態で時間が短くなったときの「パワープレー」である。長身FWを投入し、ゴール前に放り込んでヘディングで狙わせる―。小柄な選手の多いアルゼンチンには効果的と考えられた。そして狙いどおりワウト・ウェフホルストが頭で1点を返し、その後もオランダはボールをサイドに運んではゴール前に浮き球を送るという攻撃を徹底した。しかしアルゼンチンも勇敢に戦い、試合は2-1のままアルゼンチンの勝利で終了しそうな雲行きだった。そして最後の最後に出たのが、もうひとつ入念に準備され、トレーニングされた「トリックFK」だったのだ。

 実は、オランダのFKは「元祖」のボルフスブルクほど完璧ではなかった。大きな要素の「相手のブロック」に、「右」を担当したフランキー・デヨングが失敗しているのである。彼は背後にきたアルゼンチンMFエンソ・フェルナンデスに気づいていたはずなのだが、キッカーのテーン・コープマイナースのキックに目を取られ(「ボールウォッチャー」となって)、自分の仕事を忘れてしまっていたのだ。だからウェフホルストはフリーにはなれなかった。しかし彼はフェルナンデスが迫るのを感じてキックの瞬間に右足を引いて半身になり、左にターンしながらフェルナンデスをブロックしてボールを自分の左前に置き、左足を振り抜いたのである。本当に見事なテクニックだった。

PHOTO GALLERY ■【図解】オランダがアルゼンチン相手に決めたトリックFK
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